知的財産を守る。信頼と安心を守る。東京豊島区の村上国際特許事務所は特許出願・意匠・商標登録などのサービスをご提供いたします。

新着情報

海外での特許取得(連載③)

(2)前回説明したような事情を鑑み、パリ条約が制定されている。パリ条約は1883年3月20日に締結されたもので、日本は明治32(1889)年7月13日に加盟し、明治32年7月15日より発効している。このパリ条約は、次に挙げる3大原則により、国際的に同盟国民の保護を図っている。

 

(2-1)パリ条約には、特許独立の原則といって、

「同盟国の国民が各同盟国に出願した特許は、他の国において同一の発明について取得した特許から独立したものとする(第4条の2第1項)。」

と規定されている。これは国ごとに成立した特許権は、同じ同盟国民が出願した他の国の同じ発明について得られた特許に影響されない、ということを意味し、国ごとに成立した特許は各々独立であるとして、暗に独立国家として同盟国の地位を認めたものといえる。

 

 (2-2)また、同盟国間では、内国民待遇を受けるものとしている。

この内国民待遇とは、

「同盟国の国民は、内国民に課される条件および手続に従う限り、内国民と同一の保護を受け、自己の権利の侵害に対し内国民と同一の法律上の救済を与えられる(第2条第1項第2文)。」

というものである。したがって、同盟国の国民であれば、他の同盟国においても他の同盟国の国民と同等に扱われる。

 

 (2-3)さらに、優先権という制度がある。

この規定は、第4条A(1)に、

「いずれかの同盟国に置いて正規に特許出願...をした者又はその承継人は、他の同盟国において出願することに関し、以下に定める期間中優先権を有する。」とされ、同条Bにおいて、

「すなわち、A(1) に規定する期間の満了前に他の同盟国においてされた後の出願は、その間に行われた行為...によって不利な取扱いを受けないものとし、また、これらの行為は、第三者のいかなる権利は又は使用の権能をも生じさせない。」としている。

また、同条Cには、

◆特許・実用新案については優先期間が12か月

◆意匠・商標については6カ月

としている。

したがって、同盟の第1国にした発明の出願日(優先日)から1年以内であれば、他の同盟国に出願した発明の特許性の判断を、優先日で判断してくれることになる。

(3)このようなことから、パリ条約を利用した特許出願というのは、国際的に発明の保護を図る場合の手続面での利便性を良くしたものといえる。すなわち、1年の期間内であれば、言語、手続様式等の猶予が与えられ、特許として同盟国の国民と同等の権利が与えられ、また独立国としての地位も確保されるのである。


page top